モーラムだけでなくイサーン音楽で欠かせない楽器がピン(Phin)である。
イサーンのパレードでは
- 踊り手
- 楽隊(と移動スピーカー)
- ナーガの山車
が1つのチームとなるのが標準的であり、楽隊には必ずピン奏者が含まれている。
ぱっと見た印象だとウクレレかなと思うかもしれないが、フレットを見てもらえればそれが全く異質のものだと理解することができる。ギターのフレットと比較するといくつも間引かれているのだ。おそらくこれはモーラムがペンタトニック・スケール縛りになっていることが原因ではないかと思う。おまけに2弦ないしは3弦しかない。
またヘッドの先に龍のようなものが取り付けられているが、あれはナーガという蛇神であり、パヤ・テーンに最期の一撃を加えて雨を降らせる約束をするきっかけになったのもナーガだったりすることからタイでは守護神として人気がある。
元ギター奏者としてピン(ピン・バンド)の面白いところは回帰的に終わりなく演奏し続けることができることだと感じている。
ピンではないが映画「地雷を踏んだらサヨウナラ」の中でバンドがエレキギターで「回帰的な」演奏をしているシーンがあり、ピンの演奏を見て国こそ違えども同じインドシナ地域で似たような音楽文化があるのではと思ったりもしている。
ピンの権威、故トンサイ氏の時代から現在まで様々なピン・バンドがあるようだが残念ながら追いかけていない。唯一日常的に聞いているのはJoey Phuwasitだ。曲は現代風なイサーン音楽だが、その中でのピンの使い方が絶妙に上手い。MVでもそれを観ることができるが、その真価を感じることができるのはライブだろう。機会があればぜひ行ってみたい。ヨーロッパとオーストラリアはツアーしているようなので次はアメリカだと期待している。